“デザイン塾”という表題はアイドルオタクにとって敷居が高く感じられたが、大好きな伊藤万理華ちゃんに会える絶好の機会なので、参加しないという選択肢はなかった。
繁華街から小路を抜けて、旅館銀閣は京都タワーから程近くにあった。
自宅から電車で19分、片道250円。
卒業後すぐに近くに来てしまうあたり、よほど僕に来てほしいらしい。
正面玄関を抜けるとすぐに受付があり、申し込みメールと身分証明書を提示する。
今回のデザイン塾の運営元である株式会社れもんらいふのスタッフの方々は、細身かつお洒落で、アイドルオタクの僕とはまったくの別次元にお住いのようだが、ホスピタリティ溢れる接客できちんとした教育が行き届き素晴らしい。
好青年や美女たちからのおもてなしに、嬉しい気持ちになった。
畳の大広間に敷かれた座布団には、受付で座席抽選を済ませた番号が貼られている。
14時から19時までの5時間を三角座りのお尻一つで支える覚悟を決めて、伊藤万理華ちゃんの登壇を待つ。
右横は女子大生だろうか、横顔が美しい。
左隣は空席で、少しだけスペースが開きとても助かる。
代表取締役の千原徹也さんの挨拶の後、襖の奥から現れた伊藤万理華ちゃんは壇上の椅子に座った。
緑色の長袖ワンピースに白黒ボーダーの太めのベルトを巻き、軽くウェーブのかかったウェッティな黒髪を左側に流している。
畳の間に座る塾生の背筋はまっすぐと伸び、伊藤万理華ちゃんの愛くるしい姿に「可愛い」と思わず声を漏らす者もいた。
小顔に瑞々しい白肌、大きな瞳は見る者すべてを魅了する。
変わらず元気そうな姿を見て、僕は思わず顔が綻んだ。
伊藤万理華ちゃんは、意識的なのか西の空気に触れたからなのか、ところどころ関西弁が出ている。
デザイン塾とは言うものの、実際にはトークショー形式で、乃木坂46在籍時のことや初の個人仕事であるune nana coolシーズンビジュアルモデルの裏話など笑いを交えながらの楽しい進行となった。
伊藤万理華ちゃんの話し方は上手いのか下手なのか、変な間の取り方で聴く者を飽きさせない不思議な魅力がある。
可愛くて芯のある声は表情が豊かだ。
une nana coolシーズンビジュアルモデル
une nana coolのプロモーション映像は、下北澤の大丸ピーコックで撮影された。
古い建物なので屋上には柵がなかったものの、「高いところは大丈夫なんですよ」と伊藤万理華ちゃんは平気で駆け回る。
引きでの撮影時は遠くていつ撮られているのかが分からず、スタッフさんがざわつき始めたら終わったらしい。
大型扇風機で髪を靡かせたり、小山田孝司さんにしてもらったスタイリングは顔の寄りか遠くからの引きかでほぼ映っていなかったり、瀧本幹也さんにとって初の秋元康グループ関係者は伊藤万理華ちゃんだったりと、撮影でのエピソードが語られた。
une nana coolについて乃木坂46のメンバーからは高山一実さんから連絡があったそうだ。
「ウンナナすごいねー」と高山さんの声まねをする伊藤万理華ちゃんはお茶目で、会場の笑いを誘った。
une nana coolにはかつて母親に連れられて買いに行ったことがあり「お母さんも喜んでくれました」と嬉しそうな表情を見せていた。
芥川賞作家の川上未映子さんが書き下ろしたブランドコンセプトは、千原さんが打ち合わせ中に伊藤万理華ちゃんについて伝えたところ、一部が当て書きとなった。
一人での再スタートを切る中、伊藤万理華ちゃんはその言葉に勇気を貰ったという。
コンセプト | une nana cool - ウンナナクール
コンセプトの中でも「わたし、いい度胸してる」というフレーズは、千原さんと川上さんの会話の中での偶然の産物で、広告用ポスターにも使用されているキーワードだ。
シーズンビジュアルモデルの候補は他にも何人かいたそうだが、これから新しい一歩を踏み出す伊藤万理華ちゃんとブランドコンセプトが見事に重なり、今回の起用となった。
そこには、伊藤万理華ちゃんのことをよく知る千原さんからの推薦も影響している。
伊藤万理華の脳内博覧会
昨年開催された個展についても触れられた。
れもんらいふのスタッフの方々も渋谷のGALLERY Xに足を運んだそうが、朝から大行列で入場を諦めたとか。
「言ってくれたら全然入れたのに!」と伊藤万理華ちゃんは目を大きくして言った。
「気軽に来てほしいと思って、フラっと来てください、って言ったのに、フラっと行けないやんってファンの方からも言われて。いやでも私に言われましても」と当時の心境を振り返る。
グッズはパルコの想像を絶する数が売れたそうで、京都会場でのグッズ追加に繋がったらしい。
渋谷の個展でのこぼれ話として「勝手に挨拶に行くお母さんは私よりも頑張ってた」ということが明らかになった。
千原さんは母親に会った時に「あの子これからどうすんのやろうね」と言われたことを話し、「お母さんも心配してるんだろうね。今後の私を」と伊藤万理華ちゃんが不安と期待を織り交ぜて返したところ、「でも、あの子のことやから任すわ」と言っていたと、千原さんはまとめた。
元デザイナーで見た目が瓜二つの母親とは、友達のような仲の良さでもあるのかもしれない。
年末年始の過ごし方
「紅白観た。可愛かったね」と伊藤万理華ちゃんがしみじみと話すと、
「でも日村さんいらんって言ってたやん」という千原さんの切り返しに伊藤万理華ちゃんの本性が見えた。
「いや、違う。違うんです。メンバーを観たいと思って」とフォローするも、伊藤万理華ちゃんにとっては目障りな演出だったらしい。
(※わざと書いているのであり、この時は和やかな雰囲気でした。日村さんもNHKの紅白プロデューサーも誰も悪くはありません。悪いのはすべて伊藤万理華ちゃんです。)
「正直、乃木坂が出るまでガキ使を観ようと思ってチャンネルを変えてました。」と、暴露した伊藤万理華ちゃんは続けざまに、
「定番じゃないですか?やりません?だからできてよかった」と一人満足気だった。
この一連の伊藤万理華ちゃんの喋り方はとてもチャーミングで、プライベートの姿を想像できるという点においてもこの日一番価値があるワンシーンだったと個人的には思う。
でも、他の誰一人として共感してくれる人はいないと思う。
年越しは部屋で一人だったらしい。
僕もそうだったので一緒にいられればよかったな。
乃木坂46メンバーとの交流
最近では、桜井・若月・井上・松村、そして伊藤万理華ちゃんという、おなじみの犬メンでカラオケをしたとのこと。
飲食店に併設されたカラオケだったらしい。
“仕事終わりに合流したまいちゅん”というキラーワードが出る中、みんなで歌ったのはモーニング娘。の『LOVEマシーン』だそうだ。
今すぐYouTubeで配信してほしい。
個人的には生駒、西野と仲が良いらしい。
乃木坂46の看板を背負う主力メンバーも伊藤万理華ちゃんのことが好きなんだ。
2つの動画
ファースト写真集『エトランゼ』発売を記念して期間限定で公開された『トイ』と『はじまりか、』。
千原さんがその場で流そうとすると、「本当にやめてください。喋りたいから。流れてると話せないから」と伊藤万理華ちゃんは必死に阻止していた。
たしかにあの場で流したら恥ずかしいのかもしれない。
ということで、こちらでご覧ください。
ついでにこちらもご覧ください。
期間限定公開!伊藤万理華 17th個人PVフルバージョン『伊藤まりかっと。』 - YouTube
「みんな『はじまりか、』しか観いひんやんか。分かるけどさ。2つとも観てください」という伊藤万理華ちゃんのメッセージを確かに受け取った。
これから
「ファッション、広告。でもやっぱり映像に一番興味がある。日本でやっていないような撮り方をやりたい」
さすがは重力猫で世界的に注目される女優だけあって言葉に重みがある。
「ナレーションの仕事もやりたい。ありますよね、番組と番組の間にあるやつ」
(僕の心の声「世界の車窓から」?)
ということで、これから先は映像に関わる仕事が多いかもしれない。
今回のune nana coolシーズンビジュアルモデルはその第一歩として十分な大きな仕事だったに違いない。
およそ50分の講義は、とても贅沢な時間だった。
参加できて本当に良かった。
お尻はとっくに限界を迎えていたが、他のゲストも気になる方々ばかりだったので結局最後まで残ることに。
以下、簡単なまとめ。
野生爆弾 くっきー
大学時代の学祭ぶりのくっきー。
お笑い芸人でありながら、“くっきーらんど”という伊藤万理華の脳内博覧会チックな催しをしているらしく、会場にはコアなファンが足を運んでいた印象。
直近ではGLAYのTERUの顔まね(?)をしたところファンから温かく受け入れられた。
ただし、次に計画しているコブクロの黒田の顔まねはファンから叩かれる可能性が高いらしい。
コブクロのファンは何かと厳しいということを初めて知った。
楽曲がドラマの主題歌に起用されてもファンはキレるらしい。
くっきーの時は、くっきーよりも熱心なくっきーファンである“ぽっちゃり系の最高峰”女子に僕の中の注目が集まった。
痩せればかなり可愛いと思うけど、むしろ完成形とも取れる洗練されたデザインだった。
(もし何かの手違いでこのブログを読まれていたらすみません。赤茶の髪色が綺麗でした。)
串野真也 × スプツニ子!
串野さんは靴を主として革製品を制作するアーティスト。
植物や動物をあしらった装飾品としての作品が多い。
作品はギンザシックスに展示されたり、レディー・ガガが身に付けるなど、かなりの大物。
スプツさんは現代美術家で、サイエンスとアートを融合させ新しい価値を創造している。
『運命の赤い糸をつむぐ蚕-タマキの恋』では、蚕に恋愛ホルモンのオキシトシンを組み込んで本物の運命の赤い糸を生み出し、映像と音楽を合わせて一つの作品にしている。
また、ここでは書ききれないほどの受賞歴と肩書きがある。
そんな二人はこれから現代にイエス・キリストを復活させようとしている。
どうやら完成は今年の3月末らしい。
AIに聖書の80万語を記憶させ、自由に会話できるようにするとのこと。
本体はGoogle Homeだ。
東京大学准教授という地位を活かして優秀な学生に協力を仰ぎ、スピーディに製作を進めている。
同様にニーチェも復活させるらしい。
空想だと思われていることでも、現代においては実現できると思わせられる講義内容で、他にはクローン技術で生命体を生み出すことは倫理的に難しくても例えば細胞を培養してプール一面に動物の皮を創ることができれば動物を殺さなくても良い革製品を作ることができるといった、一見交わりがなさそうなアートとサイエンスを結び付けた内容は興味深かった。
僕が実際にその世界に行くことはなくても、そういった発想は参考にしたい。
また、アーティストである二人は非常にポジティブだと思った。
怖いと思って避けるのではなく怖いからこそ自分でやってみるというスタンスを持ちながらも、まずは好きなアーティストのインスタグラムやツイッターをフォローするだけでも踏み出す第一歩になるという一言には、天才の中にも身近さを感じた。
れもんらいふ塾がなければ僕のアンテナでは二人を知らないままだっただろう。
赤松陽構造
赤松さんは題字・映画タイトルのデザイナー。
作品を抽象化して文字で表現する、というタイトルデザインは、暮らしの中ではよく目にするが、今まではそれ以上には気に留めない存在だった。
しかしながら、完成に至るまでの制作過程を少しだけだが知ることができたのでこれからは見方が変わるだろう。
映画のエンドロールのクレジットの入れ方の決まりは自分にとって新しい知識で、今後女の子と映画デートする時にも注目して見たい。(まずは相手を探したい。)
5時間に及ぶ長丁場も、魅力的な講師陣のおかげであっと言う間だった。
後半になるにつれて、お尻の痛みも少しだけ和らいだ気がする。
今回は伊藤万理華ちゃん目当てでの参加だったが、講義を通じてこうしてまとめる中で、デザインを身近に感じることができたように思う。
自分の中の解釈ではあるが、デザインとは、地球上に元々存在するもの、人々の暮らしに欠かせないもの、物事をよりよく(伝える)見せるために整理すること、なのではないか。
そう考えると、生きることも仕事をすることもある種“デザインする”ということで、僕も貴方も暮らしの中のデザイナーなのかもしれない。
おわり
余談
久々のブログ更新です。
伊藤万理華ちゃんが元気そうで何よりでした。
これからも楽しいお仕事に期待しています。
また何かあれば更新しますので宜しくお願いいたします。
年末年始は部屋で一人で年越しをした伊藤さんは、
「紅白観た。可愛かったね」としみじみと語った。
「でも、日村さんはいらんってめっちゃ言ってたやん」と千原さんは笑いながら指摘し、
「いや、違う。違うんですよ。メンバーを観たかったなと思って」
と伊藤さんが急いで否定するコミカルなやりとりもあった。
「ぶっちゃけ、乃木坂が出るまでガキ使を観ようってチャンネルを変えてました。定番じゃないですか?やりません?だからできて良かった」