空き時間にどうぞ

伊藤万理華さんとの交流を主に書いています。

真夏の全国ツアー2023(完結編)

〜前回までのあらすじ〜

 


広島駅にて、山下美月ちゃんが目の前を通ったと思いきやこちらに微笑みかけてきて心を撃ち抜かれるもその直後に新型コロナウイルスに感染した筆者。療養中、急に思い立ちマッチングアプリを始め、なんやかんやで人気会員まで上り詰め、いい感じになりそうな人と出会ったのであった。

 

 

 

Aさんとは、涼しくなりましたね、等といった何気ない話題でLINEを続けていた。紅葉の季節が待ち遠しいですね、と送ると、去年はどこにも行けていないので今年は行きたいです、と返ってきた。私はすかさず、私で良ければ一緒に行きましょうと返した。すると、是非よろしくお願いしますとのことであったが、2か月も先のことである。そのような長い間、今の関係を続けることもできぬだろうと思い、また、既にAさんとは気心知れた仲になっていたため、近い内に関係を前に進めようと私は密かに考えていた。

 


Aさんは重ねて、フルーツ狩りにも行きたい、と言った。更には、運転するのは大変だし、バスツアーが良いと思う、と、私がペーパードライバーであることは知らないはずなのに、見透かしていた。バスツアーには私も興味があり、若い頃にはしばしば利用していた。しかし、近年ではその発想すら抜け落ちていたため、Aさんの提案に私も賛同した。

 


このような些細なやりとりの中でもお互いの嗜好が分かり、初めて会った時の印象はそのままに、親密度が上がっている実感があった。

 


そして迎えた当日。

待ち合わせは、N美術館近くのフレンチレストラン。

 


私は10分前に到着したが、Aさんの姿は既にそこにあった。今着きましたってLINEを送ろうとしていたところでした、ちょうどよかったです、とAさんは行った。彼女は初回の約束でもそうであったが、待ち合わせにはかなりの余裕を持って来るタイプのようである。

 


しばらくして店内へと案内され、西洋風の建物や川を一望できる窓際の席に着いた。店内はアンティーク調の雰囲気で、とても落ち着ける雰囲気である。料理が出されるまでは、これまでLINEで話していたことであったり、お互いの今後の遠征予定を話した。料理は大変美味で、味も空間も最高なレストランなので全読者におすすめしたい。

 


食事を終え、美術館へと向かった。

美術館の前にはモチーフの宇宙猫が着座しており、何枚か写真に収めて館内へと入った。目的は期間限定の民藝展であったが、館内の作りが素晴らしかったため、二人でしばらく中を巡ることにした。下の階には家具を扱う店舗があり、それ自体もアートで見応えがあったし、計算された建物の動線には感嘆した。

 


4階の民藝展の入り口の隣には、鉄板で作られたロボットが今にも動き出しそうな様子で立っていた。

 


ゲートにチケットを読み込み、暖簾を潜ると、そこには100年以上前の机や棚、食器が美しく配置されていた。

 


私は民藝というものに以前から興味があったわけではなかったが、アート全般は好きであり、美術館デート自体に趣を感じていたため、とても楽しめた。

 


奥へと進むと、着物や甕、土器等が一点ずつ展示されており、そこに書かれた説明書き(エピソード)の文章も美しい日本語で彩られ、作品と相まって見るものを魅了した。

 


Aさんとは、作品について感想を言い合いながら見たのだが、美術館という空間上小声であったため、ほぼ密着状態での会話となり、パーソナルスペースという概念は存在しないものとなっていた。これはもしや図られているのか。妙に近すぎる。そうやって私を心理的に追い込み丸め込むつもりなのではなかろうか。そんなことを考えつつも、異性とそれくらいの距離になるのは久しぶりであったため、悪くないと思うなどした。

 


美術館を出て、予定していたカフェへと向かった。橋を渡り、ビル群を抜け、辿り着いたそのカフェは、都会の中に突如として現れた工場のような姿をしている。中は吹き抜けとなっていて、1階はソファやテーブルなどの座席があり、カウンターには見たこともないほど大きなコーヒーマシンが並ぶ。更には、マルシェのようにコーヒーのみならずワインも買って飲めるというのだから最高である。注文し、2階席へと上がり、Aさんはチョコレートチャイティーを、私はレモネードとアフォガードをお供に話した。美術館の時に気になった言葉を調べたり、フルーツ狩りについて検索するなどした。途中で大きなローテーブルが空き、そちらへと場所を移した。それから、鳥取行きフルーツ狩りのバスツアーが一番魅力的だという話になり、いつ行くか日程を決めるまで進んだ。いや、待てよ。この関係のままで鳥取まで行くのはどうなんだろうか。いや、付き合う前に遠出するのはアリだと聞くが、1か月ほど先の予約を取ることになりそうだったし、個人的に曖昧なまま行くのはナシだと思った。狩りに行くのも梨だ。私はあまり悩まずにこういった。「鳥取まで行くのは僕も賛成ですが、せっかく行くなら正式に付き合って行きませんか?」「はい、よろしくお願いします」即答だった。「でも、本当に私でいいんですか?もっと合う人がいるかもしれませんよ?」とAさんは続けて言った。「個人的に、Aさんとはメッセージをしていてもやりとりがまったく苦ではなくむしろ楽しみだったし、初めてお会いした時の印象も良かったし、いつもポジティブな言葉掛けをしてくれて、それに励まされていました。本音を言うと他の方とも割とやりとりしたり会ったりすることもありましたが、正直なところ全員何か違和感があって。でも、Aさんとは前から知り合いのような、落ち着く感じがして。それに、遠出しても良いと思ってもらえるくらい僕に気を許してくれているなら、少なくとも嫌われていないと思ったので」私はつらつらと述べた。「交渉成立ですね」と、Aさんはまるで営業が成功したかのように笑った。「では、これからもよろしくお願いします」こうして、あっさりと付き合うこととなった。アプリ経由だったが、Aさんだけはアプリの先に人柄が見えて、私自身に興味を持って接してくれている感覚があった。また、男に求められるステータスもAさんは求めておらず、一緒に楽しめる存在、落ち着ける存在を探しているようだった。交渉成立と言っていたのはあながち間違いではなく、お互いがお互いの求める人物像にぴったりとマッチしたようであった。

 


外は大雨で雷を伴っていたので、既に3時間以上長居しているカフェにもう少し居続けることになった。

「連絡頻度はどのくらいがいい?」「されたら嫌なことは?」「どれくらい会いたいとかある?」といった擦り合わせをして、お互いに無理の無い範囲で付き合うこととなった。また、オタ活は第一優先とし、お互いに気を使うことなくそういったスケジュールは共有して、忙しい時は朝食や散歩だけのデートでも充分という共通認識ができた。

 


こうして、今年の夏は終わり、秋を迎えようとしている。

 


オタ活を推奨されつつ、お互いの家も15分圏内で、朝活にも付き合ってくれる相手というのはなかなかに良いなと思う今日この頃。

 


しかし、オタクであることを容認されているが故に、筆者は今後も引き続きオタクである。

 


次回以降はまたイベントなどの話に戻るが、今回の全3話は、番外編としてお届けした。いい感じに楽しく生きられるよう、色々なことに向き合ってがんばっていきたい。

 

 

 

おわり