サマーフィルムにのって@くまもと復興映画祭
はじめに
「サマーフィルムにのって」は凄く面白かったです。
老若男女におすすめです。
是非映画館でご覧ください。
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映画祭のチケットを購入しようと思ったその時、既に行動を終えていた。
何の躊躇いも無く、熊本行きを決めた。
条件反射だ。
熊本まで行けば、伊藤万理華ちゃんに会える。
伊藤万理華ちゃんに会える。
それだけでどこへだって行ける。
昔のように、期待に胸が高鳴った。
伊藤万理華ちゃんが主演の「サマーフィルムにのって」は、2日目の上映だ。
そのため、初日は熊本市内を観光するつもりだった。
でも、何となく、オープニングから観ようと思い当日券を買った。
15列目のやや上手寄り。
左手側は通路で、舞台まで遮るものがなかった。
行定勲監督の言葉に心を動かされ、映画祭そのものが楽しみになった。
その直後、予想しない展開が起きた。
開会式に伊藤万理華ちゃんの姿があったのだ。
照明によってか、彼女の瞳はキラキラと輝いている。
エクリュカラーのドレスに、セーラーカラーのような大きな襟には花柄の装飾が施され、かなり煌びやかな格好だ。
それを伊藤万理華ちゃんは美しく着こなしている。
1年半ぶりに実体を見て、泣きそうになった。
と同時に、僕はこんなにも伊藤万理華ちゃんのことを渇望していたのだと気付いた。
存在を伝えたくて、私は手を振った。
伊藤万理華ちゃんの立ち位置は私の席のちょうど前方だった。
そして15列目というこの席は、壇上の演者と視線がちょうど重なるところだった。
勘違いかもしれないけれど、目が合った気がする。
彼女の得意な分野であるため表情が柔らかかった。
これだけでもう、1年半という月日はあっという間に埋められた。
本当はひと月前に心斎橋で会えていたはずだったが、某ウィルスの蔓延によりリモート参加となり、叶わなかった。
悲しさと、仕方がなさと、色んな感情が渦巻いたが、その時は最果タヒさんから伊藤万理華ちゃんへの言葉を聞けて、それだけで現地まで行く価値があったため結果的にはオンラインでもよかった。
でもやっぱり会いたかった。
だから、オフラインというだけで本当に嬉しかった。
夜は眠れなかった。
10時から時代劇を観て、その流れで「サマーフィルムにのって」が上映された。
上映後は、食い気味に拍手が起こった。
凄く面白かった。
映画としても、
伊藤万理華ちゃんのお芝居としても。
おおまかに言うと、時代劇オタクの女子高生ハダシが、仲間を集めて映画を製作するひと夏の物語。
そこにSFやラブコメの要素が加わり、映画部との対決の構図も描かれる。
これだけを見ると、ごちゃっとした不思議な映画のように思えるし、観るまでは過剰な期待はしていなかった。
ところが、実際には期待を遥かに上回る出来で、スクリーンに目が焼き付けになった。
伊藤万理華ちゃんの豊かな表情は、顔だけに留まらず歩き方ですら主人公ハダシであり、役を解釈して自身で表現するという力が格段に上がっていた。
今までは主に伊藤万理華自身として評価されていたように思うが、今作をきっかけに俳優としてのキャリアを駆け上がると確信した。
また、サマーフィルムにのっては、伊藤万理華ちゃんが得意とするユニークなキャラクター的場面も多数あるが、そこに熱い場面やシリアスな場面が散りばめられ、個々で存在する伊藤万理華ちゃんの魅力が一つに凝縮されている。更に、終盤には殺陣のシーンがあり、そこではダンスで培われたしなやかさや力強さが見られる。刀を持つシーンは序盤にも見られるが、後半のそれとは同じ人物とは思えない動きだ。しかし、それは物語を通じたハダシの変化であり、想いを伝えたいという気持ちの強さであるようにも見えた。
嫌なヤツが出てこない映画だった。みんな友達になりたい、そう思える生きたキャラクター達。個人的には、ハダシ以外だと特にブルーハワイが好きだ。ライバルの映画部に協力する場面が、真面目に演じているにも関わらず見せ場までのキャラクターの掘り下げによって笑えるシーンとなったことには構成の巧さに感動した。
その他にも、走るシーンや、映画部とハダシチームの撮影地が被るというところも、ただそれを見せるだけではなく、観る側に考える余地がある印象的な場面だった。
終盤において「好きを言葉に出す」か、ということには、蛇足だという意見もあった。しかし、蛇足だと思っていたハダシが言ったことに意味があったと個人的には思うし、そう言うのを止められなかっただろうし、それはハダシ自身の変化だと思う。カットすることもできたシーンかもしれないが、劇中のハダシ自身がこの映画に残したのだろう。
と、ここまで書いてみたものの、やはり劇場で観るのが一番だ。ここまで読んでくださった方には、是非ともスクリーンに映し出される演者の表情に注目しながら、ハダシ達と一緒に映画製作に夢中になって、ひと夏の思い出を作ってもらいたい。
「サマーフィルムにのって」が2021年の夏の一番の話題作となることを祈って、今回のブログを締めたいと思う。
しかし、締められない。
上映後、ティーチイン、要するにトークショーがあり、その後には感想を伝えたり質問ができる場面があった。
私は拙いながらも、どこが好きだったかを伊藤万理華ちゃんと監督に伝えた。
素晴らしい感想をと格好をつけようとしていたけれど、上手くまとめられなかった。
でも、言いたいことは伝わったと思う。
本人の目を見て、映画を観た直後に感想を伝えられたのは今までにない貴重な経験だった。
話している時に頷いてくれたのが嬉しかった。
「あ、ありがとうございます」と、肩をすくめて言っていたのもぽいなと思った。
熊本のマダムの方々はところどころ笑ってくださって有り難かった。
ティーチインの後は、短時間だがサイン会が開かれた。チャリティーTシャツを購入した人限定で、そこにサインを書いてもらえるという。
長蛇の列ができた。
白黒2枚のTシャツに監督と伊藤万理華ちゃんからサインをもらった。
卒業後のサインは自分にとって初めてだった。
3年以上経ってようやく。
近くで姿を見ることができたのも嬉しかった。
でも、ちょうど目の前でそれまでつけていなかったマスクをつけた。
さては顔を見せないつもりかと思ったけれど、
「話したかったからつけたんじゃないの」という解釈を聞いて、勝手に気分が良くなった。
昔のようにはいかないけれど、
こうしてたまに会うことができて、
直接声を届けることができたらいいなと勝手ながらに願う日曜日の夜だ。
伊藤万理華ちゃんが活動を続ける限り、ずっと追いかけていたいと改めて思う。
おわり